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桜のスタンピー

  ワシントンの桜の話、と言ってもワシントン大統領が少年時代に桜の木で斧の切れ味を試した事を正直に話したというお話ではありません。小学生時の読み物で読んだのですが、どうやらあれは創作だったらしく…。
 首都ワシントンD.C.の桜のお話です。明治時代に日米の多くの人の尽力で、日本からアメリカへ友好の証として贈られました。ですが、最初に贈られた二千本は病害虫などで焼却され、更に三千本贈ったそうです。その苗木を1912年(明治45年)の春に当時の大統領夫人と日本大使夫人が中心となり首都ワシントンD.C.のタイダル・ベイスンのほとりに植えました。そこから百年以上もの間、日米で共に護り育んできたのがワシントンの桜です。
 2年前に岸田文雄首相が、今年のアメリカ建国250周年に合わせて250本の桜を寄贈する考えを示したのは記憶に新しいと思います。
 さて、そのワシントンの桜の中に、スタンピー(切株ちゃん)という愛称がついた桜がありました。特別な存在として沢山の人に愛されていました。
 それは見事に大きく構える木ではなく、壊れかけた細い幹にほんの少し花が咲く木でした。幹の中が深く裂け、空洞になっていて、外皮だけで立っているような、か細い木でした。しっかりと根を張ることもできなかったのです。壊れかけた護岸の影響により、海水の混じる水にさらされる状態でした。
 環境の悪化に耐えながらも、健気に毎年花を咲かせていたスタンピーは、百年に渡る日米の友好の証の歴史を一身に背負って立っていたのでしょう。スタンピーは2年前の護岸改修工事の為に伐採されてしまいましたが、なんとスタンピーのクローン増殖に成功したという一報が入りました。まるでリアル現代版『きりかぶのあかちゃん』(そう、同名の心温まる童話がありますね)。
 毎年同じに見える桜ですが、決して同じではありません。同じ並木道でも、どこかで傷ついたり伐採されたり、再生されたり植え替えられたりしていますね。
 花が咲くから美しいのですが、それを護ってきた多くの人の歴史や苦労も同時に讃えているわけなんですね。
 ワシントンに限らず、大切な桜を護る事は、時代を超えて法灯を護る事となんだかすごく似ています。

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