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蝉時雨と焼きまんじゅう

 ミンミンゼミが激しく鳴く、暑い暑い夏でした。子どもの頃、毎年母の故郷の群馬に帰省していましたが、その年はいつもと違いました。祖父の新盆でありました。
 母の実家は浄土真宗ではありませんので、ナスやキュウリに割り箸を刺して牛や馬に見立てたものが飾ってありました。伯父にあの可愛いものなぁに、と訊いて、ご先祖の乗り物だと教わりました。ふうん…ご先祖さまて案外小さいんやな…と思いながら目を凝らしましたが、野菜に乗ってる人は見えませんでした(笑)伯父に「猫ちゃんやワンちゃんも作りたい」と言って笑われました。
 その後、伯父が母に、何年か前に舅さんが亡くなったのに、お前きちんとお盆のお飾りしていないのかい、と呆れたように話していました。子どもって時として罪なきスパイになりますね。
 母は「あら、うちは浄土真宗だから、野菜の乗り物はいらないのよ。お盆もいつも通りのお飾りでいいんですって。やってないんじゃなくて、やる必要がないのよ」と、子どもみたいにムキになって言い返していましたので、あぁ兄妹喧嘩って大人になってもやるんだなぁと思って見ていました。浄土真宗はお盆の迎え火や送り火もやりませんし、その他やらない事が多いので、他宗の人からは「門徒物忌みを嫌わず」を「門徒物知らず」と揶揄される事もあったとか。
 夏休みに母の故郷へ行くと、いつも伯父の畑の採れたて野菜が美味しいのが楽しみでした。「おじちゃんのキュウリはお花の香りがするね。いつも食べてるキュウリはこんな香りなんかしないよ」とか、別に伯父をおだてるわけではなく、思ったままを伝えると、都会の子は可哀想だなぁとか言いながら、また母が叱られてしまうのです(笑)
 そしてまた、群馬には「焼きまんじゅう」という甘辛い味噌だれのおまんじゅうがあって、大人のゲンコツ位のおまんじゅうが四つ串に刺さっているのです。帰省すると誰かがいつも焼きまんじゅうを買ってきてくれていました。食べ終わると口の周りもほっぺたも味噌でベタベタ汚れてしまうのですが、祖父の新盆の夏、私はベタベタにならない食べ方をあみだしたのでした!ただ単にどうして大人たちはベタベタにならずに食べられるのだろう?と思って観察していたから、なんですが(笑)
 あれから半世紀経ちましたが、蝉時雨の中に身を置いた時、なぜか焼きまんじゅうの芳ばしい香りを思い出します。

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